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はじめに:人的資本経営における「負の資産」の解消
近年、企業経営において「人的資本経営」への注目度が高まっています。人的資本経営とは、従業員を単なる労働力としてではなく、企業価値を生み出す重要な資本として捉える考え方のことです。
ハラスメントが横行する職場では、従業員のモチベーション低下や離職率の増加、生産性の低下など、さまざまな問題が発生します。さらに、SNSなどによる情報拡散によって企業イメージが低下し、採用活動に悪影響を及ぼすケースも少なくありません。
そのため、ハラスメント対策は、単なるリスク回避ではなく、従業員が安心して能力を発揮できる環境づくりとして重要視されています。近年では「守り」の対策から「人材活躍を促進するための投資」へと考え方が変化しています。
人的資本経営の視点で見るハラスメント対策の重要性
人的資本経営では、従業員一人ひとりが持つ知識や経験、スキルを最大限に活かすことを重視しています。多様な人材が能力を発揮するためには、安心して働ける環境づくりが欠かせません。
とくに重要視されているのが「心理的安全性の確保」です。心理的安全性とは、自分の意見を安心して発言できる状態を指します。
職場でハラスメントが発生すると、従業員は委縮し、意見交換や相談がしづらくなります。その結果、組織全体のコミュニケーションが停滞し、生産性の低下につながるおそれがあります。
従業員が新たな挑戦やキャリアアップに取り組むためには、失敗をおそれない心理的な安全が欠かせません。健全な組織風土を整えることこそが、人材の能力を最大化させることにつながります。
また、近年では労働安全衛生の観点からも、従業員のメンタルヘルス対策が求められています。精神的ストレスによる休職や離職は、企業にとって大きな損失です。そのため、多くの企業が相談窓口の設置や研修の実施など、ハラスメント防止に向けた取り組みを進めています。
日本の法的枠組みと情報開示の連動
近年、国内ではハラスメント対策に関する法整備が進んでいます。その代表例が「改正労働施策総合推進法」です。一般的には、パワハラ防止法とも呼ばれています。
この法律によって、企業にはハラスメント防止措置を講じる義務が課されています。たとえば、相談窓口の設置や再発防止策の実施など、実効性のある対応が求められています。
また、近年は法令遵守だけでなく、企業の取り組み状況を外部へ開示する流れも強まっています。人的資本経営への注目が高まるなか、投資家や求職者は「従業員を大切にする企業かどうか」を重視するようになってきています。ハラスメント対策や働きやすさに関する情報を積極的に公開する企業も増えています。
さらに、女性活躍推進法や育児・介護休業法への対応も、人的資本経営に欠かせない重要な要素です。育児や介護と仕事を両立しやすい環境を整えることで、多様な人材が長期的に活躍しやすくなります。
これまでは「性別や国籍で差別しない」という守りの姿勢が中心でしたが、今後は「DE&I(Diversity Equity & Inclusion)」という攻めの戦略へと意識を変えることが企業の持続的な競争優位を築くために欠かせないポイントといえるでしょう。
【深化】ハラスメントゼロを実現する「3P・5Fモデル」の適用
人的資本経営という考え方が広まるきっかけとなったのが、2020年に公開された「人材版伊藤レポート」です。これは経済産業省がまとめた報告書であり、企業と投資家の持続的かつ良好な関係構築の重要性を示しています。
このレポートでは、人的資本経営を推進する手段となる枠組みとして「3P・5Fモデル」を提唱しています。3Pとは、企業価値を高め続ける人材戦略に欠かせない「3つの視点(Perspective)」を指します。そして5Fは、どんな企業でも共通して戦略に組み込むべき「5つの要素(Factors)」のことです。
3P・5Fモデルでは、人材戦略を経営戦略と連動させることが重要視されています。ハラスメント対策においても、単なるコンプライアンス対応としてではなく、企業価値向上につながる重要な経営課題として捉える必要があります。
経営層が「ハラスメントを許容しない」という姿勢を明確に示すことで、組織全体に意識が浸透しやすくなります。安心して働ける環境を整えることは、従業員エンゲージメントの向上や人材定着にもつながります。
また、人的資本経営では、多様な人材が能力を発揮できる環境づくりも重要なテーマです。組織内の「同質性」が高すぎると、無意識の偏見である「アンコンシャス・バイアス」が生まれやすくなります。
その結果、特定の価値観や働き方が優先され、働きづらい環境になってしまうケースも少なくありません。こうした課題を防ぐためには、多様性への理解を深める研修の実施やリモートワークを中心とした柔軟な働き方の促進が欠かせません。風通しの良い職場環境を整えることで、社外からの評価が高まり、優秀な人材の確保にもつながることでしょう。
企業研究で注目すべき「ハラスメント対策」の指標
近年では、就職活動や転職活動において、企業のハラスメント対策を重視する人が増えてきています。そのため、企業研究を行う際には、売上や知名度だけでなく、従業員が安心して働ける環境が整備されているか確認することが重要です。とくに人的資本経営を推進している企業では、ハラスメント防止に向けた具体的な取り組みや情報開示が進められています。
たとえば、内部通報制度の有無や対応プロセスの透明性は重要な判断材料です。相談窓口が設置されていても、適切に運用されていなければ十分な対策とはいえません。通報後の対応体制や再発防止策まで整備されているか確認することが大切です。
また、従業員満足度調査(ES調査)やエンゲージメントスコアを公表している企業もあります。これらの指標は、従業員が会社に対してどの程度満足して働いているかを把握する材料となります。数値が継続的に改善している企業は、職場環境改善に積極的に取り組んでいる可能性が高いといえます。
さらに、メンタルヘルス不調による休職率や復職支援制度の有無も重要なポイントです。ストレスチェック制度やカウンセリング体制を整備している企業は、従業員の健康維持に力を入れていることがわかります。
加えて、役員や管理職に対するハラスメント研修の実施状況も確認したいポイントです。継続的な研修によって、組織全体でハラスメント防止への意識を高められます。
誰もが自分らしく働ける組織が、最強の資本になる
人的資本経営では、従業員一人ひとりの能力や個性を最大限に活かすことが重視されています。そのためには、誰もが安心して働ける環境づくりが欠かせません。ハラスメントが発生しやすい職場では、従業員が本来持つ能力を発揮できず、離職率の上昇や採用力低下など、企業全体の成長にも悪影響を与えるおそれがあります。
近年は、働き方や価値観の多様化が進んでおり、企業にはさまざまな背景を持つ人材が活躍できる環境整備が求められています。性別や年齢、国籍、ライフスタイルなどに関係なく、公平に能力を発揮できる職場環境を整えることで、従業員のエンゲージメント向上につながります。
また、積極的にハラスメント対策へ取り組む企業は、社外からの評価向上も期待できます。安心して働ける環境は、優秀な人材の確保や企業ブランド向上にもつながる重要な要素です。さらに、多様な人材が活躍できる環境では、新しいアイデアや価値創出が生まれやすくなり、企業の競争力強化にもつながるでしょう。
ハラスメント対策は、単なるリスク回避ではありません。従業員一人ひとりが自分らしく働ける環境を整えることこそが、人的資本経営を実現するうえで欠かせない取り組みといえるでしょう。
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引用元:https://www.safetynet.co.jp/
心の専門家集団による"自社専用のハラスメント対策"- Point
導入実績:法人企業2,000社+中央省庁、自治体他 / 年間33万人
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会員数:150万人
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専門家在籍:公認心理師、産業カウンセラー、臨床心理士、看護師、栄養士、ファイナンシャルプランナー、警察OB など
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