
カスタマーハラスメント、いわゆる「カスハラ」という言葉を耳にする機会が増えています。過剰なクレームや理不尽な要求によって、働く人が深刻なストレスや被害を受けるケースも少なくありません。こうした状況を受け、2025年6月には参院本会議でカスタマーハラスメント対策に関する法案が可決されました。本記事では、そもそもカスタマーハラスメントとは何かや法案の概要についてご紹介します。
カスタマーハラスメントについて
カスタマーハラスメント(カスハラ)とは、顧客や取引先がサービス提供者や従業員に対して、過度な要求や暴言、威圧的な態度、不当なクレームなどを繰り返し行う行為を指します。
たとえば、ミスに対して必要以上に大声で怒鳴る、土下座を要求する、長時間にわたり執拗な謝罪を求めるなどが典型例です。
こうした行為は、働く人の精神的・身体的な健康に悪影響を与え、職場環境を悪化させる大きな要因となっています。企業側も顧客対応の中で、どこまでが正当な要求で、どこからがハラスメントに該当するのか判断に迷うことが少なくありません。
近年、社会全体でこの問題への関心が高まり、法整備やガイドラインの整備が進められています。
令和2年に施行されたカスハラ対策と企業の取り組み
カスタマーハラスメント(カスハラ)は、年々深刻化しています。厚生労働省が実施した「令和2年度 職場のハラスメントに関する実態調査」では、約3割の職場でカスハラが発生していると報告されています。
こうした状況を受け、厚労省は令和4年に「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を公表し、企業に具体的な対応策を示しました。以下では、その内容をもとに、企業が取るべき対策をご紹介します。
カスハラ防止に向けた事前準備が重要
カスタマーハラスメントの防止には、事前の準備が欠かせません。まず企業は、基本方針や姿勢を明確にし、従業員に対して社内ルールを周知する必要があります。
そのうえで、相談対応体制の整備や対応手順の策定、教育・研修の実施を行うことが重要です。あらかじめ対応の流れを明確にしておくことで、現場の従業員も安心して対応できます。
実際にカスハラが発生した際の対応
実際にカスハラが発生した場合、迅速で適切な対応が求められます。まずは、被害状況の正確な把握と事実確認を行い、必要に応じて事情を知る関係者からも聞き取りを行うケースも多いです。
従業員への配慮も欠かせず、プライバシー保護や不利益取り扱いの禁止も周知徹底する必要があります。こうした積み重ねが、従業員の安心感と信頼につながります。
心身への影響を防ぐための継続的な取組み
カスハラは従業員の心身に大きな影響を及ぼします。厚労省の調査では、被害者の67.6%が「怒りや不安を感じた」と回答し、46.2%が「仕事への意欲が低下した」としています。繰り返し被害を受けた人の中には、不眠や通院、服薬を必要とするケースも少なくありません。
こうした深刻な事態を防ぐには、企業全体で継続的に取り組む姿勢が重要です。行動指針の整備や、従業員への教育、取引先との連携強化など、日頃からの備えが求められています。
2025年6月に可決されたカスハラ対策法とは
2025年6月に参議院本会議でカスハラ対策を盛り込んだ改正・労働施策総合推進法が可決・成立しました。働く人が安心して職務に取り組めるよう、企業には新たな対応が求められることになります。
社会通念を超えた迷惑行為に企業の対応が義務化
今回の法改正では、カスタマーハラスメントを「顧客や取引先、施設利用者などの言動が、社会通念上許容される範囲を超え、労働者の就業環境を害する行為」と定義しました。
これにより、これまで曖昧だったカスハラの線引きが明確化され、企業は被害の防止や早期対応に取り組むことが法的に義務づけられます。
悪質なクレーム、長時間の謝罪要求、威圧的な言動など、働く人が受ける過剰な要求に対して企業が適切に対応する仕組みづくりが今後一層重要になります。
厚労省が今後示す具体策に注目
具体的な対策については、厚生労働省が今後策定する指針に盛り込まれる予定です。企業は、カスハラに対する方針を定めて従業員に周知することや、相談窓口の設置・整備、相談対応の手順づくりなどが求められる見通しです。
これにより、現場で働く従業員が被害に遭った際に、会社として迅速かつ適切な対応が取れる体制が整えられることが期待されています。
まとめ
令和2年の法改正では、企業にカスタマーハラスメント対策として事前準備や相談体制の整備、教育・研修などの取り組みが求められるようになりました。そして2025年6月には、さらに一歩踏み込んだカスハラ対策法が可決され、社会通念を超えた迷惑行為への対応が企業の義務となりました。厚生労働省は今後具体的な指針を示す予定であり、企業には被害防止と従業員の安心確保に向けた一層の取り組みが期待されています。
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引用元:https://www.safetynet.co.jp/
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